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とろろ昆布ダイエットに警鐘を

最近とろろ昆布がダイエットに良いとの情報をもとに、スーパー等の市場からとろろ昆布が消えるというような現象が起こっております。

 昆布の食べすぎはヨードの過剰摂取による甲状腺機能低下症を引き起こす可能性があります。我々はヨードを食事の成分からとっておりますが、その食材の中で極端にヨード含量が高いのが海藻です。日本人は海藻を多く摂取いたしますので通常の食事を摂っている方にはヨード不足は発生しません。しかし、欧米では海藻の摂取がほとんど無いために不足気味で、食塩にヨードを添加している国もあるほどです。

 現在、人間のヨードの最低必要量は、0.15mg/日位となっており、日本では成人の摂取上限値を3mg/日としております。日本の乾燥昆布は100グラム当たり100~400mgのヨードを含んでおりますので10g位の乾燥昆布を摂取するだけで上限値の3倍以上摂取することになります。ヨードは、不足すると甲状腺ホルモンを産生することができず甲状腺機能の低下を引き起こしますが、過剰に取りすぎても逆に、甲状腺機能低下を引き起こし、ひどいときには甲状腺腫を発症させると報告されています。実際に昆布の食べすぎによる甲状腺障害の報告は数多く認められております。

 今回、話題になっておりますとろろ昆布は、単なる乾燥昆布よりも一般的に食べやすく、実際に10g位は昆布類が好きな人なら食べても物足らないと感ずる量です。それが、ダイエットに結びつくと極端な量を摂取する人が出てきます。今までの日本人の食習慣から推測して、一日に10g位の昆布の摂取は毎日でなければそんなに心配する必要はないと考えられますが、現在のように、市場から消えるほど食べられているということは、一部の人に明らかに過剰摂取があることが考えられます。したがって、皆様のまわりにとろろ昆布ダイエットを実行しよう、または実行している人を見かけられましたら、注意喚起をしてあげてください。

 しかしながら、最近は和食的な食生活をしない人の場合、欧米人と同じように食事からのヨードの摂取が不足する傾向にあります。したがって、昆布を急に怖い食品として敬遠する必要は全くありません。昆布は、相変わらず食物繊維とミネラルの供給源としての重要な食品素材です。すなわち、昆布の料理が好きな人は、今まで通りの食べ方を続けても、かまわないと推測されます。ただ、一応、日本人成人のヨード一日摂取上限値が3mg/日であることと、乾燥昆布には100g当たり100mg以上のヨードを含んでいるということは頭の隅に留めておいてください。